パリ〜ブレスト〜パリ その7


ヴィレンヌ・ラ・ジュエルを抜けて単独走
郊外へ抜けるとひたすら一本道を直進。
しかしあまりにも直進過ぎて途中でコース指示の矢印がなく、それはそれで不安になる。
何せ今回はGPSもなければ地図もキューシートのようなものも持っていない。
だいたい次のコントロールポイントの町の名前すら知らない・・・
数キロ走って矢印が見えたときは正直ホッとしたりする

往路でこんなところ走ったっけ?
逆走だとかなりの下りだけど、走ったかなぁ〜〜・・・
そんなあいまいな記憶をたどりながら往路のイメージを思い出す。
後ろから来た選手が速すぎてつけなかったりで単独走を続けていく
さっきまで一緒だったスウェーデン人たちはまだ走り出していない

登りが思いのほかきついのと、思った以上に暑く感じることでスピードが全然でない。
加えて単独走、暇で眠い
このあたりになるとだいたいだがゴールの時間が読めてくる
自分でだいたいのゴール時間を設定し、それを目標に頑張るようにする


もう200kmは切っているから気持ち的には楽だけど、でもよく考えたら200kmってかなりいい距離、まだまだ長距離の分類だろう
次のコントロール、モンターニュ・オ・ペルシュは往路で補給地点になっていたところ。
あと40kmぐらいってところで後続何人かに抜かれ、それを目標に頑張る。
とにかくアップダウンが緩く大きなウェーブを繰り返すようになり、登りでのスピードはますます乗らない。


このあたりに来ると移動審判のオートバイが頻繁に抜いていく
多分居眠りしている選手などを確認しているのだろうか
抜きざま必ず「大丈夫か?」と声をかけて行ってくれる
複数人だと単純に抜いていくだけだが・・・
やはり居眠りなどで事故したりしている人も多いのだろうか・・・


モンターニュ・オ・ペルシュへ最後の登り
これを下ったんだったっけ??こんなに大きな峠だったっけ・・・もう記憶にない
登り切ったと思ったら体育館のコントロールポイントまで更に100mほど登っているのが辛かった
チェックしてもらいに行くとここは1人の人がチェックしていてゼッケンも通過順番も紙に記入している。
先頭から既に70人前後が通過したようだ。
往路でハンガーノックになってから40人弱に抜かれたことになる
しかし頑張れば100番以内でフィニッシュ可能だ
そう思うと俄然やる気が出てくる
ここではレストランに立ち寄らず、そのままスタート
そして下っているところ、ちょうど往路でアタックがかかった急坂でパン屋を発見、そこで美味しいパンをいくつか買い走りながら食べる。
作戦として、ここは時間をセーブし、そしてラストのポイントでレストランへ
というのもゴール時間は22時前後
下手するとハンガーノック状態でゴールするかもしれない
そうなったら面倒だし、最後のコントロールでゴール後の分のエネルギーも補充
そうなったらここで止まると無駄に時間を浪費する
まずは早くゴールすること、そして100番以内でゴールか・・・


1090km モルターニュ・オー・ペルシュ 8月23日午後3時33分 スタートから47時間23分


町を抜けると一直線の道
かなり何も考えずいい加減な状態で走っているので、矢印があったのかの記憶も曖昧になってくる。
1km以上前後に誰もいなくて、そして矢印がないところだと途端に不安が増してくる

そうしているうちに一人に抜かれ、ついて行ったら
「交代しろよ、時速30km/hはキープしろよ」など、やたら注文を言ってくる
あまりうるさいので下りでペースを作ったら
「オ〜〜!カミカゼ!」とまたうるさい
しかしそのあとに「スペイン人か?」と聞かれて凹んだが・・・


その後36km/hぐらいで巡航1分で交代したら33km/hで15秒で交代と、「一緒にパリまで協力していこう!」と言うわりに協力のバランスが悪い
「これって協力じゃなくて引いてください、お願いしますの間違いやろ!」と思いつつ、まぁどうせ引かせるだけ引かせて放っていかれるだろうなと思いつつも構わず先頭を引く。
理由はどうであれペースが上がるのはいいことだ
最後のコントロールポイントであるドルーまでの15kmほどは、路面がまるで目の粗いヤスリの上を走っているかのようで、自転車のあちこちからガタが発生してうるさい。
俺のはマシだが引かないフランス人のバイクはマナーモードで壊れた携帯のようにずっとバイブレーション状態
路面が悪いだけでも鬱陶しいのに加えて激しい夕立のような雨
ドルーの町に入ると雨であちこちから道に土砂が流れ込んでいる
一瞬目に痛みが走る
砂が目に入ったか・・・
かなり痛い、もしかして角膜に傷が入ったとかかも知れない。しばらくすると左目が痛くて目を開けていられない


ドルーのコントロールポイントに到着
これが最後のコントロール
ここで最後にパスタを食べる
ゴールの距離はもう100kmを切った
なんか疲労は極限だが、何かに憑りつかれているかのように倒れるってことはない
気持ちはしっかりしているのか。
それすら麻痺して分からない

アキレス腱も先月の静岡のブルベの時のようにパリパリとしている。
歩くのも自転車に跨るのもどんどん鈍くなって痛みを感じる。
しかしあと100kmをきった
道路の標識に「PARIS」の文字も見えるようになってくる
もうあと少し・・・


1165km ドルー 8月23日午後6時32分 スタートから50時間22分