PBP2015 時を越えて走るランドヌール 02

masahikomifune22015-08-22



8月11日 夕方 パリ・シャルルドゴール空港へ到着。

再びパリの地へとやってきた。
足早にパスポートコントロールへ。
トイレに行ったり何かするのはそのあとだ。
そして荷物を受け取り、まずは両替へ。思った以上にレートが悪く、散々並ばされたことを考えると日本で両替してきたほうが良かった。
空港からホテルのあるサンシール・レコールへは約60km。
電車で近くまでアクセスするのが正攻法だが、輪行袋にキャスターバッグで30kgオーバー、結局タクシーで向かうことに。
83ユーロ
距離と時間節約を考えると高くはないし、逆にこの金額を「安かったね」と言えるような走りをするしかない。
ドライバーもすごく親切で、終始片言の英語で会話しながらホテルに到着。重い荷物もホテルのフロントまで運んでくれ
「必ず成し遂げられる!頑張って!!」と激励される。


このホテルはスタートゴールまで約4kmと最高の場所。
サポーターであり今回参加者としてPBPを走る川邊功一くんが事前に宿を手配、一緒にシェアしませんか?とお誘いを受けた。
最大4名が泊まることができ、最終的には今回サポートしてくれるラファジャパン矢野社長、そして撮影のブライアンも来ることに。
みんなが揃うのは13日の夕方、それまでは同じホテルを予約し、14日の朝にホテル内で移動するようにすれば、移動の手間がかなり省略できる。

PBPまでのトレーニングプランとしては

  • 12日:5時間半ほどのZONE 2ライド
  • 13日:6時間ほどのZONE 2ライド
  • 14日:2時間ほどのイージーライド
  • 15日:小一時間で十分

特に13日の練習は自分の中では重要で、ここできちんとPBPのイメージをもって走り、好感触をもってトレーニングを終えた胃。
PBPのようにアップダウンを進み、そして帰ってくる。
後半の平坦区間も、HRを上げずに時速30キロをキープしている。


【8月12日のトレーニングデータ】
https://flow.polar.com/training/analysis/170606770

【8月13日のトレーニングデータ】
https://flow.polar.com/training/analysis/175621510

練習後に3人がフランスに到着。
そのままピザレストランへ。
さすがに到着後に自炊するのに食材を買いに行くとか、なるべく疲れることは避けたい。
そもそもオレが食事を担当すればいいのだが、この上なく料理が苦手、と言うかできない・・・興味もない。


8月14日

軽くトレーニングを行い本番へと備える。
そして本番で使用する「2号車」で練習へ。バイクの最終確認だ。
矢野くん、川邊くんの3人でイージーライド。
しかし矢野くん速すぎ!!
出場しない、一番プレッシャーも何もない彼が、一番足が軽そうだ。
Poissyの町でカフェタイム。
30年この町に住んでいるという日本人に声をかけられたり、出発間際に川邊くんがバーストしてテラスの人みんなの注目を浴びたり、まぁそんなリラックスした楽しいライドだった。

【8月14日のトレーニングデータ】
https://flow.polar.com/training/analysis/173424304


8月15日

バイクチェックそして受付の日だ。
メインで使うバイク「リドレー2号車」ことリドレー・ヘリウム+カンパニョーロ・レコードEPS(電気式)はラファ矢野社長の渡航時に一緒に持ってきてもらい、オレがもってきたのは「1号車」リドレー・ヘリウムSL+カンパニョーロ・レコード(機械式)。
2号車はバッテリー内臓の為、航空会社によっては最悪の場合持ち込みを拒否される可能性もあったため(スペック的にはまったく問題なし)だ。
EPSの弱点としては、もし何か電気系のトラブルが走っている最中に発生してしまうと、正直お手上げだ。
基本的にはトラブルはないのだが、「ゼロ」ではない。
1号車か2号車か・・・少し悩むが腹をくくって2号車でコントロールへ。
「A098」今回のオレのゼッケンナンバーの書かれたシールをフレームに貼られてコントロール終了。
常日頃からちゃんと状態を管理しているので心配はしていないが、それでも検査を通るまではドキドキする。


引き続き受付へ
前回とは場所も受け付け方法も微妙に変わっているので要領を得ない。
大きな流れ(みんな並んでいる列)でいいのかなと思う反面、横の方でも何か並んでいるので、気になりチェックしてみると、ゼッケンはそちらで大きな流れは反射ベスト受け取りの列だった。
良かった・・・
もちろん反射ベストも受け取らなければいけないので引き続き並ぶが、結局コントロールから反射ベスト受け取りまでに約2時間要した。
(コントロールと受付の間で、露店に立ち寄り補給食にパワージェルとパワーバードリンクを購入するのに20分ほど要したのも原因だが・・・しかしのちにこのパワーバー購入が功を奏した)


一度宿に戻り、夕方には再びスタート地点へ。
日本人参加者が集まって記念写真を撮影するとのこと。
知り合いに聞くとみんなが行くわけではなさそうだが、同じ「同志」として集まるというのなら拒む理由はない。
遠く日本からPBPへいろいろな思いを乗せてみんなやってきている。
自分のように80時間カテゴリーで、PBPの原点とも言えるタイムにこだわるもの、タイム制限いっぱいでもゴールにこだわるもの、仲間と一緒にゴールを目指すものなど・・・
思いは様々、でもみんな少なくともゴールまでは自分と「戦う」と言うことには変わらないと思う。
自分の気持ちと、コンディションと、天気と、地形と・・・
それがランドヌールなのではないか、と理解している。


井手マヤさんともお会いし、お話しさせていただく。
彼女から「国内ブルベに新しい風を吹き込んでいただき、期待している。明日も大幅なタイム更新期待しているので頑張って!」と言われ、感激する。
国内ブルベでレースをしているわけではないが、300kmブルベで11時間台で走ると「レースをしている、危ない。ブルベに反する」と言ったコメントをいただくことがある。
時速30キロで走って休憩をほとんどしなければコースによっては12時間を切るのはそれほど難しくないのは理解してもらえるとは思うのだが、ブルベによっては参加者から「もっと普段は飛ばしているんでしょ?はやくカッ飛んでみせてくださいよ」と言われたり「へぇ〜、ホントに信号止まってるんだね」と、言われることがある。
自分は元々レーサー出身でブルベをやり始めたので、面白く思っていない人がいるのも理解しているし、昔からブルベを楽しまれている、ランドナーなどでツーリストな世界の人だとなおさらそうなのだろうと思っていた。
(これも誤解なのかもしれないが)
なので正直井出さんからそういう事を仰っていただいたことが驚きで、そして感激だ。
ちなみにあちこちで「むちゃくちゃ速い」と言われるが、国内のブルベの各距離の「最速記録」は何ひとつ自分じゃないことは付け加えさせてもらいたい。
井手さんと楽しい会話を楽しみ、お互いの健闘を称え会場を後にする。

普段国内ブルベで交流のある落合くんや岩佐くん、森脇くんらオダックス近畿のメンバーらとレストランで夕食。
明日の戦いを前にリラックスして食事を楽しむことができた。


8月16日

朝7時前には目が覚め、パン屋へ焼き立てのバゲットを買いに行く。
軽く自転車を走らせ、これから始まる1,200kmが近づいていることを肌で感じる。
いつも通りの食事を済ませ、バイクの最終チェック。
チェーンオイルをワコーズのプロトタイプ、このPBP用に開発してきたスペシャルのものに交換する。
空気圧チェック。今回は5.8気圧。路面も悪いし1,200kmを高圧で走るのは体へのストレスが半端ない。
前回はレーシーなホイールに23cのタイヤで挑んだが、1,000kmを越えてからは体はボロボロでもうどこにもプッシュする力も気力もなかった。
あれは間違いなく下からの衝撃によるもの。今回はカンパニョーロ・ゾンダにオリジナルタイヤのMASSA T2601、インナーチューブはパナレーサーのノーマルブチル。
クッション性をもちつつも力はダイレクトに伝えてくれる。
何よりもアタックと言ってもロードレースのような1,000WATTの世界を語ることはない。
昼食はパスタを茹でて食べる。
次に暖かい、味気のある食事をするのはいつだろうか。


ホテルを14時に出発すれば間に合うが、特に寝られる雰囲気もなく13時半ごろには出発準備開始。
前回は時間の区切りを行わず、スタート地点で200人だったか300人ずつスタートさせたので、後ろにいるといきなりウェーブスタートの後回しにされたが、今回はエントリー時点できちんと戸のウェーブ化指定できる。
もちろん最初の組「A組」でエントリー済みなので16時ちょうど。
だから1時間前に着いてもいいと思うのだが、よくわからないので早めに会場入り。
ちなみにA組のチョイスは、結果的には「失敗」だった。


スタート30分前にスタートに向けて移動開始。
ある程度上位ゴールを考えているであろう選手たちは前の方へ。
そこで聞いた会話は、昨年トップタイムだった選手を含む、多くの「有力フランス人ライダー」たちは、どうも意図的にB組にエントリーし、最初のPCまでにA組をキャッチしようという考えのようだ。
急にフランス人の少なさにざわつき始める。
これだけで十分「サイクリング」じゃない。完全に戦闘モードだ。
正直何もしようがないが、周りにいるタイムを気にしているベルギー人や、その他デンマークオーストリア人、ドイツ人らが動揺している様子を見ていると、なんだかプロだった頃の集団のナーバスさを思い出さずにはいられない。


スタート10分前、ようやくスタートラインに並ぶ。
たくさんの人がスタートを見るために集まっている。
今年もなんとか第一列を確保。
別にスタートからずっと前を行くわけじゃないから最後尾でも上がれる自信もあるしどこでもいいが、なんとなく自分の気持ちに対する整理だったり、意気込みだったり、やはり最初の方が気持ちが入る。
こういうのは軽い気持ちでチャラけちゃダメだ。
だいたいそういうので落車に巻き込まれたりトラブルを起こしたり。
平静を保つ。
それが一番大事だ。

そして16時ちょうど
いよいよ1,230kmの旅、いや1,230kmの戦い始まった。


久々にフランスでトレーニン
前回のPBPではトレーニングと言う感覚はなく、本番だけ走ったようなものだったので、多分選手時代の2002年までさかのぼるかも
今回は12日から14日までの3日間、リラックスして、そして集中して走ることができた。



PBPでは最後のPCとなるドルーの町へもトレーニングで訪れる。



PBPの後半をイメージして、頑張らないようなペースだけど頑張る
少し食料を減らし、少しのグリコーゲンでたくさんの脂肪を燃焼できるようにをイメージして走る。
グローブが塩まみれになる暑さだったが、最後まで集中して走ることができた。



ラファ矢野社長、ブライアン、そして川邊くんが合流するまでは一人で自炊
一番苦手なのは料理。
パスタを茹でてソースをかけるだけ。
野菜は袋入りのものにトマトをのせるだけ
けっして料理ではない(笑)



今回撮影のためにアメリカから来たブライアン(左)そしてラファジャパンの矢野社長(右)
PBP中はサポートをしてくれるので心強い



受付会場
ある程度時間で区切っていたはずなのに、ほとんどの参加者が指定時間を無視してきていたのか待ち時間が1時間近く。
個人的にはPBPを走りきるよりも、こちらの方が辛かった



大会期間中は命の次に大事なブルベカード
これを紛失してしまうと完走扱いにならない



日本人参加が集まり記念撮影
微妙に外人も混じっていたように思えたがw



スタート前
スピードメーターの距離を0kmにセット
今から白紙のブルベカードに、スタンプが重ねられていく



各国の国旗を彩ったウェアを身にまとったランドヌールが多数
まるで世界選手権のよう
集中している参加者を見ると、よけいに燃えてくる