BRM319近畿600、SR取得へ

masahikomifune22017-03-31

1月から早々に200km、300kmそして400kmとクリアーし、順当に3月をもって600kmを完走しSRクリアーの手はずだった。ある意味あまりにもあっけなさすぎる。そんな考えをしていた矢先、オダックスジャパン代表の稲垣さん訃報が飛び込んできた。

最初の頃は直接ではないが稲垣さんに自分の活動に対して稲垣さんなりに思うことがあったのかご意見をいただくことがあり、彼の本質が見えなかったために理解しずらい人だという印象が先行していた。
しかし、自分がある程度ブルべを経験していく中で、今度は直接お話しできる機会も増え、稲垣さんの思いを直接お聞きしていくうちに、実はすごく期待されていて、基本ネガティブな気持なんかないということがわかり、それどころかPBPが終わってからも褒めてくれたり喜んでくださった。
お会いするたびに、彼の経験してきたブルベの困難さや回数を誇らしげに言われるたび、実は彼自身も「アスリート」で、タイムは違えど意識されていたということが徐々にわかり、ちょっとお茶目で、だけど筋の通ったアスリートで、話をしていても他の大多数のランドヌールな人よりも話の筋の通り方がスマートで心地よかった。
だから毎回エクストリームなブルべに出かけると稲垣さんとの、ほんの一瞬だが会話できる時間というのは心底楽しみにしていた。


そんな彼がニュージーランドのブルべで車との事故に遭われ亡くなられたということが、本当に信じられない。ショックだった。それだけたくさんの経験を積まれてきたということは、逆に言えば思っている以上に慎重でいてクレバーだったということの証だと理解していたからだ。
そんな稲垣さんにできることは、その直後に控えたブルべで喪に服しつつも、ちゃんと無事にゴールへと辿り着く。稲垣さんの魂との会話を心の中でずっと楽しみながら走ることだという結論に至っていた。

しかしその近畿600の開催される連休に国内のブルべを自粛するような動きがあり、SRクリアーどころか稲垣さんの追悼ブルべがなくなるところだった。

だが最終的には、各団体が私と同じように走ることが稲垣さんに捧げることだということになったのだろうか、すべてのブルべが予定通り行われたようだ。これは各団体の方たちの難しくも厳しかったであろう状況での決断に対して、心から敬意を表したい。きっと多くのランドヌールたちも同じ思いなのだと思っている。


朝5時に福山市をスタートし尾道からしまなみ海道へ。
今治から松山、八幡浜宇和島を通って愛南までを往復する600km。
一度この近畿600に出ているので大まかなルートは把握している。


タイム狙い?なメンバーはスタート同時に遥か彼方へ。今回も「盟友」いや「迷友」笹井と一緒に珍道中でも楽しみつつ、後半のスピード低下をミニマムにすれば結果的に26時間ぐらいでは行けそうだ。
先行して向島を終えたあたり先頭を変わろうと思っていたのに、向島途中で笹井はあっけなく離脱。スピードは上がっていないが集中力が切れたのか・・・
結局ここから一人旅。スタートからずっと先頭なのである意味ずっと一人旅なのだが・・・


尾道から始まるしまなみ海道、いったい何度走っただろう。ブルーラインに沿って走れば今治へと辿り着ける。何度見ても近くに感じる瀬戸内の海は素敵だ。個人的には伯方島から大島へと入った潮の流れを激しく感じるあたりが一番好きだ。今年から相棒となったエディメルクス・ムーラン69の小気味いい軽快なダンシングで橋への接続道を駆け上がり、そして下っていく。

今治から愛媛の海岸線はやや交通量が多め。というかしまなみの快適さが普通の交通量を交通量多いと感じてしまう、麻痺している。
松山道後温泉では商店街の中は徒歩区間道後温泉の観光客に交じって自転車を押しての走行は、最初は少し躊躇したが意外と溶け込んでいる。
松山から国道378「夕やけこやけライン」は、愛媛県の外部コーチとして何度も愛媛県に足を運び、自分自身何度も走ったことのあるルート。ほんの少しだけ追い風、そして気温も徐々に上がり心地よさを感じる。
八幡浜からは海岸線で春の陽気。登りでは半袖でないと暑いぐらい。
宇和島からの宿毛街道は、前回走ったときは真っ暗で横は川なのか?と思いながら走っていたが今回は夕日がきれいで海をしっかりと感じる。
折り返し前に先行する3人とすれ違う。
愛南タワーへの登りはイーブンペースで復路への体力を温存。復路で徐々に日が暮れてナイトランモードへ。今回はナイトランでストレス軽減すべくキャットアイVOLT1600x2。400km以上のブルべは2灯とレギュレーションで決まっているが、VOLT800x2と比べると重量増で峠やアップダウンの登り返しで重さは感じる。しかしナイトランで明るいほうがスピード低下が少ないし、何よりも安全で精神的にも余裕がある。明るいうえにバッテリー持続時間が長いので、光量を落としてバッテリーセーブしなくとも、街灯のない区間で存分に明るくしても大丈夫だ。宇和島八幡浜〜伊予間は、日中と夜間ではまったく印象が違う。特に月明りを感じられない天気だとなおさらだ。間違いなく重量増のハンデを明るさでアドバンテージに変えてくれている。


伊予の手前で後輪のスポークが切れてしまいスピードダウン。
これ幸い?とコンビニで小休止。イートインがまだ使えるようなので暖かい食べ物を食す。夜間は防犯上の理由でイートインを使えないコンビニが多く、正直ナイトランを決行するサイクリストにとっては不都合極まりないはずだ。なんとかサイクリスト特権で、例えばどこかのコンビニと提携して、パスを持っていれば、いくら以上のお買い上げを条件にイートインを1時間以内なら夜間に利用できるとかしてほしいものだ・・・きっと激しく同意してくれる人はいるだろう。

ニップル回しでホイールの調整。応急的には問題ないだろう。こういうシチュエーションのためにもホイールは完組でもニップルがリム外側に出ていて調整可能なもの、最悪の場合の事態をある程度回避できる機材が役に立つ。
今回使用したのはカンパニョーロ・ゾンダ。去年からのエクストリームライドを支えてきてくれたので悲鳴を上げたか・・・というか俺自身の体重増加が原因か??まぁそれは気にしないようにしよう。そうだ、悪いのはこの世の中だ。責任転嫁し終えたところで気を取り戻し走り出す。


夜明け前が一番集中力が切れ、睡魔と戦う。そして寒さとカロリー不足が危険。
伊予手前からカロリー不足で力が入らず睡魔が時折襲ってくる。そして松山〜今治間もだ。今治手前のコンビニに入り、ホットコーヒーとクロワッサン。なんだかフレンチな朝食。そして来島海峡を渡るころに当たりが明るくなり始める。
生口島にわたるころにはきれいな朝日に感動。しまなみで見る朝日は別格。あまり回らない脚、そしてホイールを多少気遣いながら福山を目指す。
今治まで微妙に向かい風。しかし来島大橋では追い風に。きっとゴールまで追い風だ!と気をよくしたのもつかの間、大島からゴールまでは向かい風だった。夕方以降雨との予報、きっと低気圧の影響で風は逆向きなのだろう。


今回は朝9時にならないとゴール地点でスタッフが受付をしてくれないので、先にゴールした場合は近くのコンビニでレシートチェックして、後程ゴールの認定作業をしても良いとのことだったが、きっとゴール近くのコンビニでレシートをもらてホテルに着くころには9時を回るので、スピードをダウンして9時にゴールの福山城へ行くことに切り替える。そう判断したとたん、スタートのときは福山市内は信号祭りだったのに、今度はすべてギリギリで回避していく・・・やっぱりホテルに直行するか??いやいや、面倒だ。やっぱり福山城だ。


そして9時ちょうど、スタートから28時間ちょうどでゴール。
ホントは26時間ぐらいのペースを考えていたが、いろいろな条件で遅れてしまった。まぁ昔ほど速く走れるほどの体力もないし、年中追い込んでいると最近は体を削っているという感覚がある。なので追い込むのは「これだ!」って思えるときだけでいい気がしている。とは言いつつも、基本的にはファーストラン。
自分の定めた目標と「戦う」、今から進んでいく自然や環境と「戦う」。それは対人のみが重要ミッションだったロードレースとは対象が人か自分の定めたバーチャルの人なのか、はたまた自然などの外的なものなのかという違いはあれ度、基本的には「戦う」ということは一緒だと思っている。
まぁこれはファーストランじゃなくとも、グルメライド的にブルべをしている人も制限時間がある以上どこかでバーチャルなものと戦っているだろうし、自然環境に行く手を妨害されるようなときにも戦っているに違いない。
自転車で前に進むということは、少なくとも戦っている、と思っている。
勝つのか負けるのかはその人の能力次第だ。


今回何度も稲垣さんと独り言のように語りながら走っていた。トップチューブに取り付けたバッグには喪章をつけて、ゴールまで稲垣さんを想いながら走った。
追い風の暖かい区間では「稲垣さん、こんなにいい環境で走らせてくれてありがとうね。感謝するよ。代わりに楽しんでいるからね〜」と。
しかし復路で寒さや睡魔と戦っているときは
「稲垣さん、もう試練くれんでいいですから!!ホンマやめて!!そっちにはオレまだ行きたくないから・・・」と、都合の悪いことは稲垣さんのせいにして・・・(笑)
自分なりに今後も稲垣さんのことを走りながら思い出し、これからもずっと忘れないようにしたいと思っている・・・


3月にして早々とSRをクリアー。今年は仕事が忙しくなるのがわかっていたので早めにブルべをひと段落させたかった。もちろん今後もいくつかのブルべには参加して楽しみたいと思っている。
4月には中部の400km、そして5月にはSR600が四国で開催されるのでチャレンジしたいと思っている。そして何よりも今年の最大の目標は7月末のロンドン〜エディンバラ〜ロンドンだ。


往路のデータ
https://flow.polar.com/training/analysis/1214250628
後半を見据えてほぼ完ぺき?なペース配分。しいて言えば少し我慢するところでHRが高い。もう少し落とし気味でも良かった。
追い風、気温、前に追い付いている?離れている?掴めない状況に時折焦ってペースが不安定だった。
折り返してはしばらくはせめて明るい時間に、というちょっとした焦りが復路での失速の要因だ。


復路のデータ
https://flow.polar.com/training/analysis/1214251060
スタートして15時間でグリコーゲンの補給が足りていないのか、一気にHRがダウンしている。ケイデンスも復路より低め。8時間から12時間にかけての少し手抜きな補給とリカバリーを軽視したペース配分の結果と解釈している。


しまなみ海道
天気がいいしまなみ海道は最高だ。何度走ってもテンションが上がる。



道後温泉
自転車を押していても驚かれなかったのは、それだけ自転車で訪れる人も多いということで慣れているのだろうか。



長浜大橋、通称「赤橋」は、日本最古の可道橋。


八幡浜で補給。思いのほか暑い。



海岸沿いのR378は小さなアップダウンで気持ちいい。



もう春はすぐそこか?思わず足を止めてしまう。



宿毛街道では傾く太陽で海が光り輝く。300km走って疲労もあるが、疲れも忘れてしまう。



復路の夕やけこやけライン。海も何も見えない。自分のライトの光で見える景色だけ、道路に塗られたブルーラインだけが今見える景色のすべてだ。



多々羅大橋で朝日を浴びる。それまでの睡魔は徐々に太陽の光で消えていく。
やはり人は、太陽とともに生きている。そう感じる瞬間だ。



ゴールは福山城の月見櫓、新幹線福山駅から見える櫓だ。
ここでゴールできるのが、この近畿600の魅力でもある。
城好きにはたまらない。