2015 BRM717岡山1000 PBPへ向けて パート2 〜中国山脈なのか?〜


三次を前に知人に遭遇。
たまたまこの近くに来ていて、そろそろ来るんじゃないか?と思って待機していたらしい。
限られた時間故に挨拶だけしてすぐさまスタート。三次から益田まで、そして三瓶山までのこのルートの西側パートは、個人的に最も苦手でナイトランになるために最難関という位置づけだ。

瑞穂のPCに到着後、ここからは細く長く走るイメージでペースを上げすぎないようにする。益田までふつうに休めるところも少ないし、ここからはこのブルベ中の最難関と言って過言ではない。
太陽が沈みナイトランに。2日目の夜がやってくる。


広島と島根の県境付近、地味に険しいアップダウンが続く。
越えても越えても続く山脈・・・みたいな中国山地。北広島からのアップダウンで800m越えが最高だったはず。
暗くなってからは慎重にルートをキューシートで確認しながら走る。
勢いで進んでしまいミスコースすると取り返しのつかないことになる。
農道のような細い道に入り込み走っていると、顔やあちこちに蜘蛛の巣をかぶる。
夜の道は人の世界じゃない。
一瞬で蜘蛛の巣を張り巡らし、まるで使われていないような農道の雰囲気を醸し出すが、少なくとも2時間ぐらい前には落合くんも通過しているはず。
そのたった2時間でこんなに立派な蜘蛛の巣とは・・・

ライト一つは路面を、もう一つはやや上を照らして蜘蛛の巣を見つけやすくする。
中にはタランチュラか!!みたいな蜘蛛も。
さっき思い切り蜘蛛の巣をかぶったが、タランチュラみたいなのがヘルメットの中とか、背中とかに張り付いて、おまけに噛まれたり(刺されるなのか?)したら、俺はどうなるんだろうか?と考えただけで目は覚めるが急に萎えてきた。と同時に体中かゆくなってきた。
そういえば小学生の時、蜘蛛に噛まれたのか、思い切り耳の後ろが腫れたことがあったな。あれはいったいなんだったんだろう・・・そんなことを考えながらペダルを回し続ける。


もう少しで頂上か?というところで、ライトの光の先に黒く動く物体それも2頭発見。
なんだろう・・・まさかクマじゃあるし。島根県にクマはいるのか??と思った瞬間、光がとらえたのは親子グマだった。
向こうの足が止まる。俺ももちろん止まり足を着く。
あれ?熊と向き合って止まるのは一番だめなんだったっけ・・・おまけに小グマを連れている。これってもしかして最悪??
どうすればいい??

持っているものをで武器になりそうなもの、う〜ん、チェンリングぐらいか。
クマの爪を食らったらタイヤやホイール、フレームなんて一撃で終わりだろう。もちろん俺自身も。
すぐに自転車を盾のようにもてるよう考えつつ、相手の動きを観察する。
どれだけ睨みあっただろうか。たぶん数秒か。
すると小グマ共々山の上に向かって走り去っていった。ホッ
としたのも束の間、悲劇はそこから始まった。


進もうとペダルを入れた瞬間、山からさっきの子グマがオレの目の前に転げ落ちてきた。
え〜〜〜っ!!オレちゃうし!!
心の中で思わず言い訳をしていた。
これで母グマに襲われたら濡れ衣にもほどがある。
すごい勢いで母グマがオレの目の前に山から降りてきた。

次の瞬間、母グマの鋭い爪がオレに振りかかり、右足から血しぶきが飛び散ってあまりの痛さに崩れ落ち、そのままクマに乗りかかられ・・・
と最悪の想像をした瞬間、母グマは小グマを咥え上げて、山へと走り去っていった。
怖い、怖すぎる。
今のうちに逃げよう。
クマも人間も、話の通じないやつと向き合うのは意味がないし危険だ。

国道191号に出る。
ツイッターフェイスブックを通じて熊目撃情報だけは流しておく。
参加者は電波の都合上見ていないかもしれないが・・・


国道191号を40km走行し、益田へと向かう。
ここまでは延々と道路標識にも益田の文字はなく、不安に駆られることもあったがようやく益田へ一本道。
しかし益田の町ギリギリまでアップダウンを繰りかえす。進んでも進んでも山を越えない。

山地じゃなく山脈だなやっぱ。京都の丹波山地が山地であって、島根の中国山地は山地じゃなく山脈だな・・・

なんとか日の変わる前に益田に到着。暖かいもの、コンビニでパスタを食べてここで仮眠をとる。
シューズを脱いでリラックス。
睡眠時間は40分に設定しアラームセット。
セットと同時に爆睡していた。


益田からのルートは今回初登場の広域農道。
主催者の澤田さんに何度殺意を覚えたことか(笑)
まったく自分がどこにいるのかも把握できないほどに標識もなければ明かりもない。
ただひたすらライトの光に移る景色のみを頼りに走る。

星空は恐ろしいほどにきれいで、今まで見た星空の中でもベスト3に入る。
最悪ライトがなくても何とか走れるのでは、と思うほどの明かりだった。

深い山の中を延々と走り続けていると、まるで自分がこの世の世界の一員ではない、まったく時空の違うところにいるような感覚に見舞われる。
多くの人が眠り活動を停止している中、ひたすらペダルを回して少しずつだが位置を変えている。
今は何県?今は何市(町?村?)
そんなことすら確認する必要もないような区間を走っていると、ますます麻痺してくる。


朝方、ようやく少し景色が見え始める。
山からは水蒸気が立ち上り、まるで自分がようやく下界に降りてきたような、人間界の一員に戻れたような感覚を覚える。

島根県川本町因原、ようやくチェックポイント。
5時59分。
約5時間強ほどかかって益田からここまで。
90kmほどと考えると如何にコース的にきつかったのか想像できる。信号なんてほぼなかったのに・・・
ここでしっかりと補給し三瓶山へと向かう。
天気は曇り雨。
まだ台風通過の余韻なのだろうか。
三瓶山へのヒルクライムは少しペースアップしてみる。
高校3年のインターハイは三瓶山の周回コース。
ゴールの太田の町へ向かってのダウンヒルは、人生で一番眼孔が開いたんじゃないかというほどに怖かった記憶がある。
それ以降プロになって、そんなもんじゃないよ的なスピードで多くの坂道を下ってきたけれど、その時の恐怖感を越える体験が記憶にない。
そんなことを雨の降る三瓶山で考えながら走行。
下りもウェットで無理のない程度に走り、県道40号の掛合までの峠でもいいリズムで走れるようの頑張る。


国道54号出雲神話街道。
下り基調ながら路面も悪く、意外ときつい。
雨がちの天気でやや股ずれ気味、よけいにきつい。
残りは250kmほど、距離は「たいした」ことはないが、まだまだここから中国山脈の最後の強烈パンチが続く。



邑南、本当に何もない(笑)
中国地方にありふれたよくある田舎町だ



昼間でもびっくりだが、夜中に見る到底安全のために存在しているとは思えない。
長野県の杖突峠、高遠へと向かう途中にもおなじようにあり、真夜中に見ると背筋が凍る思いだ



お!
お?



北広島町にて2回目のナイトランへ
夕焼けはきれいだが・・・夜は別世界、人間の支配力の及ばない獣の世界、神の世界だと強く感じる






日は落ちていく。
方向感覚をはじめ、人間の持つ能力の低さを感じずにはいられない。
方位磁石やキューシート、スピードメーター、携帯・・・ありとあらゆる「限られた」持ち物で自分を守っていく。
ブルベのナイトランの楽しみなのかもしれない


ゆっくりと、時間の流れがいつもと違うかのように夜が明けていく
神々しくも感じる島根の山々
しかしまだ俺は山の中・・・下界は程遠い