2014 BRM709北海道1200 05


別海を過ぎてすぐ風がきつくなり雨粒が大きくなり始め、スピードが落ちたところですぐに落合くんに置いて行かれ単独になる。
ここまで合わせてくれていただけか、すごい勢いで一瞬で消えていった。
さすがにここまで約200km向かい風メインの中で引いてきたから俺には限界かな。
少し膝に違和感もあるし、冷えていることで立ちこぎすると痛みがある。
ギヤをかけすぎず登りで無理しないようにマイペースで走る。

ライトの明かり以外、景色は何も見えない。
方位磁石を見ると南南東。
R44に入ると東に進路は向くわけだからまだだ。
どれだけ走ったのか感覚では全まったく分からない。完全に感覚で物事を測る能力が低下している。
コースプロフィール的にはアップダウンそして平坦があると思うのだが、別海からは延々登っているんだろ?そう問いたくなるような感覚だ。


そしてようやく信号が見える。R44かな。
ペースは激減。当初の余裕を持ったペースと比べるとまだ速いぐらい。
コンビニでホットコーヒー、そしてウィンナーを食べる。
無意識に脂肪ののった食べ物をチョイスしているから、少し寒く感じているのかもしれない。

コンビニを出ようとすると殴りつける雨と風で戸がかなり重く、開けたら途端に店の中が水浸しになるほど。
入店するときは追い風だったので気がつかなかったようだ・・・
申し訳ない気分だがどうしようもない。


携帯の電源を見ると残りわずか。
充電するには浸水する可能性があるし(ちなみに昨年のSR600で携帯を壊したのは、充電中の状態で大雨になり、浸水したようだ)ポケットからモバイルバッテリーを取り出したり何かするのは、もう少し雨が入り込まない、座り込んでも大丈夫な場所にしたい。
気にかかるのは警報などが出ていないのか、そして大会自体はこの天候は許容範囲なのか。天気は回復するのか?しないのか?
まぁ根室まで行っみよう。
厚床のコンビニを後にし、嵐の中を進んでいく。


時々スピードを見てみると、15キロにすら到達していない。
ちょっといいペース!と思っても時速20キロ・・・絶望的だ
まるで風洞実験の機会の中でペダリングしているかのようだ。
ポケットの中の飴などを取り出したいと思いつつも、もし他の重要なものが落ちてしまったら正直この風と暗闇じゃ探し出すのは無理だろう。
しかしどんだけ向かい風きついんだ・・・
時速15キロだと納沙布岬まで3時間以上・・・途方もなく遠く感じる。


道にできた水たまりで、道の状況は何一つわからない。下手をすると路肩かどうかもわかりづらい。
草木が道に散乱していて台風直撃で走行した九州1000を思い出すが、なんとなくこっちの方が危険度合いが大きい。命に危機として響いてくるレベルがこっちの方が高い。なんなんだろうか・・・

途中で爆風で飛ばされそうになったり横殴りの雨で視界も何となくしか見えていない。
そのうちこのリスクと向き合うこと自体に意味を感じなくなり始める。
ただ義務感でペダルを回している。


そのうち道の駅が先にあるという看板発見。
とにかく一度止まって状況を知りたい。
今は走れれば走るだけ、進めれば進むだけ、・・・ゲーム(ブルベ)をする環境じゃない気がしている。


-10日22時45分 道の駅スワン44ねむろ到着

まずは雨風のしのげる場所を確保し、ビニールカッパを脱ぐ。
ポケットから乾いたタオルを取り出し顔や手をぬぐう。
これだけの作業で生きている実感。いったいどんだけ神経すり減らして走っているんだろ。



-7月10日 22時53分 長瀬さんに電話


R44の状況を説明し、警報や他の参加者から何か情報がないのか連絡を入れた。
この時点では中止等の予定はない、警報の話もない。と。
ただR44の状況は誰も知らない状況なので、納沙布岬のスタッフにも確認をするとのこと。
ちょっと状況がどうなるかわからないしここから無理に進まず、最悪の場合はここで夜を明かしてもいいと覚悟を決める。

建物の隙間を見つけて雨風を完全にしのぎ、濡れた体も乾いたタオル、そして温かい缶コーヒーをお腹に入れて少しでも体温低下を防ぐようにする。
出走記念にもらったバンダナ(?)、頭に巻いて頭を冷やさないようにする。さっそく役に立った


日が変わった頃、納沙布岬のスタッフの方が来られる。
ひとまず回収して別海の体育館に搬送するとのこと。
回収で搬送??
これはまさか天気回復したのち、ここまで再びピックアップされて再出走とかってことはないだろう。そうなるとここで中止か??
では、と思っているとなんと上保さんが走ってきた。
回収車はコンパクトカー。スタッフは2名なので4名乗車に2台はちょっときつい・・・



-11日 00時20分 道の駅スワンにて隙間を見つけて避難

こちらは少し衣類は乾いてきているのに対して、上保さんはまだ今着いたばかりでびしょびしょ。顔もまだこわばっている。
さすがにオレが先とか言う場合じゃない。
まずは上保さんに行ってもらう。
再び一人、嵐の道の駅・・・


北海道の友人やら、本州でテレビのニュースを見て心配してくれている友人が夜中なのに着信がある。
どうやらこの近辺、相当ヤバい状況らしく、雨も15mm以上の強さで降っているらしい。
とにかく何があるかわからない。
再び建物の隙間に入り込み、温かい飲み物を飲んで寝るとしよう・・・
あっ、持ってきたホテルの歯ブラシで歯は磨いておこう・・・虫歯にならないように(笑)



-11日02時59分 別海のコンビニにて暖かいものを購入

いったいどのぐらい寝たのだろう
5分と言われれば5分の気もするし、数時間と言えば数時間の気もする。
ただ体は座って寝ているからか硬直している。
スタッフの人の声で目が覚めた。
さっきとは違うスタッフ、どうも別海から来られたようだ。
回収されて別海へ。
改めてみると、意外と厚床からこの道の駅まで走っていることに驚く。
意識の中では数kmだったのだが・・・
別海の、カッパを購入したコンビニで今度はチキンカレーやホットコーヒーを購入。
今は温かいものが食べたい。
そして体育館到着
長瀬さんはじめスタッフに心配そうに出迎えてもらい、なんとなくただ事じゃない?と感じた。

状況を話しているうち、どうやら警報がそのタイミングで発令。
ここでどうやらこの大会の中止をいう判断が下された?
なんだか頭の中は夢の中・・・
そんなことを向こうで言っているような、いや、もしかしたら言ってほしいだけのような・・・・

朝3時過ぎ
空は少し明るくなっていく。
ひとまず濡れた衣類はすべて脱いでヒーターの前に置いて乾かす。
そして毛布にくるまってマットの上に。ひとまず寝れるだけ寝よう。


-11日03時42分 別海体育館にて仮眠開始
こんな広い体育館で、寝られるとは思えないが・・・
素っ裸に毛布だから、はだけたところで女性とかに見られたらヤバいなぁ・・・
そう思いながら、嵐の中のような暗い世界に吸い込まれるように、深い眠りに一瞬で到達してしまった・・・


道の駅スワン44ねむろへ到着
ひとまず情報収集だ



エントランスとトイレの間
間口50センチで奥行き1mの隙間を発見。
身体をこじ入れて、ここで雨風をしのぐ。
最悪クマが出ても・・・いや、それは多分ダメだな



別海の体育館
濡れた衣類をすべて脱ぎ、素っ裸で毛布にくるまる。
濡れた衣類は精神的にもよくない。
毛布にくるまった瞬間、体温が上昇して力がみなぎってくるのを感じながら、深い眠りに誘われた