2014 BRM709北海道1200 06


5時38分、もっと寝たいのに自然と目が覚めてしまう。
そういえば昨日の、いやついさっきと言ってもいいだろう、寝たのは4時ぐらいだったから・・・
寝る直前にはっきりと聞いてないが中止になったのだろうか。
実は中止を中止して再開しているのかもしれない。
自分の周りで寝ていたメンバーは、まるで何事もなかったかのように朝の早い時間から普通にサイクルウェアを身にまとい、体育館を後にしていた。
なんとなく重い空気を背負っているように見えたから、やはり中止なのだろうか。


確認すると
やはり中止になったそうだ。
道東は電車も動いていない。さて、ここから先どうしようか。
このままUターンして自転車で戻っていくのか、はたまた・・・

今回北海道で非常にお世話になっているサイクリングフロンティア北海道 代表の石塚くんから心配してメッセージや着信が入っている。
最悪の場合は迎えに行きますよ、と。
しかし6時間はおまたせします、と・・・
そ、そんなにかかるの!!


こんな当然のことなのだが、北海道は大きい。
むかし「でっかいどぉ〜北海道ぉ〜〜」ってCMがあったが、本当に大きい。
ここは札幌より520km走行地点。最短ルートでも札幌へは400km以上だ。
関西でいきなり「銀座ってどうですか?」と聞かれても話は通じないしわからない。
まさにそんな感覚だ。


どうしようか、とたたずむ約20名の別海に辿り着いたメンバー。

ここから札幌までの移動手段で考えられるのは

  • 自転車自走
  • 自転車で北見のPCへ:ここから電車移動
  • レンタカー
  • 石塚くんにヘルプ(往復12時間コース)

今は天気は風もなく雨も止んでいる。
が、それもつかの間のようだ。
自走するならさっさとした方がいい。
ただ、北見に行ったからといって、別に何も100%大丈夫ということではない。
残ったメンバーでどうするのか話し合いをする。
さすがに10人以上、ベルべが好きだという意思の疎通以外の共通点がない大人たち、多種多様な職業なのでまとまりにくい。
きっとまとまりだすと恐ろしいぐらい簡単にまとまるのだろうけれど・・・


落合くんから連絡があり、どうしますか?こちらは最悪レンタカーで2人で帰ります、と。
レンタカーを真剣に考えるならば、たくさんで乗ってみんなで割ったほうがいい。
根室には普通車のレンタカーしかないらしいが、女満別ならば商用車も借りれるみたいだ。
レンタカーかぁ〜いつもチーム活動では簡単に要領よく借りているのだが・・・

ん???
そうだ、今思い出した。
スタート前にブルベ用のカードホルダーに、会社のレンタカー法人カードを入れていたんだった。
北海道の場合、最悪交通手段を確保できないかもしれないと思い、会社のレンタカーカードを入れておいた。
それならばレンタカーは比較的安く借りることができる。


最終的に12名+バイク11台(1台は積み込むのがかなり困難だったので、PCスタッフが搬送してくれることに)
商用バン2台、商用の軽ワンボックス1台。
これで何とか詰めるはず。
免許を持っていて運転してもいいと快諾してくださった方二人とスタッフに女満別にまで送っていただきレンタカーの手配。
女満別から別海へと戻るルート、皮肉なほどに青空。
しかしまだ根室半島だけが嵐らしいが・・・


車を借りて積み込み、そして移動開始。
まったく今まで見ることのなかった雄大な北海道の景色を見ながらの移動・・・
途中足寄の道の駅で食事
この時は日差しが強いほどの青空。
何人かは自走で戻る人を発見。確かにこうやって走っていくには絶好のサイクリング日和。
いいなぁ〜〜ってみんな口々には言っているが、それほどリアリティがない。
自分もだけど今回レンタカーで帰った人の中で、不思議と走りたい!!って感じの人はほとんどいなかった。
ブルベを一つの認定をもらう、ゲームとして楽しんでいる人がほとんどで、そうでなければ「何が何でも」走るということではない、と感じた。


移動を開始して本当に6時間ほどはかかった。
夕方6時を回り、スタート地点のさとランドへ。


48時間前には雨雲の下、今から600kmもの彼方へ走っていき、ボロボロになって生還しているだろうと思っていた。
まさかこんな形で戻ってくるなんて、自分もそして誰も想像していなかった。
ゴールできなかったことには正直歯がゆい思いですらある。


しかしそれは自分も含めて、誰にもなんともしがたい自然が牙をむいたことで、それに逆らって生きていくということは人間である以上してはいけないと感じている。
勇敢に立ち向かうことは素晴らしいことだし、自分もそんな勇敢で格好いい「男」になりたいと憧れている。
だけど危険に踏み込んで、生還することに命を削る価値は今回まったくなかったし、そんなことをする状況でもなかった。
何より、自分たちは認定を取るために一瞬そんな天秤にかけられない出来事をも超越して、ペダルを漕いでどこまでもどこまでも果てしなく突き進んでいきたいランドヌール(Randonneurs)
もし主催者が中止という、最も重く勇気のいる決断を下してくれなかったら、危険な世界へ足を踏み入れるもの、自然と戦って敗れ去り、止まるということがダメだと勘違いしてしまうもの、取り返しのつかない事態が発生していたかもしれない。

レンタカーで戻ってきた別海からの12名、全員の意思が中止という判断に納得し、主催者の判断に冷静に感謝し理解していた。
そしてメンバー全員がまるで昔からの友人のように、食事でも移動でも和気あいあいと楽しむことができた。


主催者の人、一緒に北海道1200を楽しめた仲間、サポートしてくれた石塚くん、応援してくれていた北海道のサポーター、そして本州からエールを送ってくれていたたくさんの人・・・
結末は突然思っていたなかった予期せぬ方向に進んでしまったけれど、だからこそみんなの気持ちがひとつになり、気持ちがすごく伝わり嬉しかった。
もし・・・
もし北海道1200が再び開催されるならば・・・
自分は100%戻ってくるだろう



北海道、そしてみんな
ありがとう



昨日までの悪天候はどこへやら
たった一日ずれてくれていれば・・・



足寄の道の駅に立ち寄り、みんなで食事
走っているときはこんな風に談笑しながらゆっくりと食べることもなかった





さとランド到着
この48時間の出来事は、まるではるか昔の出来事のようにすごい勢いで昔話になろうとしている