パリ〜ルーベ終了

今年もJスポーツ「パリ〜ルーベ」の解説をさせていただきました。
「スパルタクカンチェラーラvs「トルネード」トム(ボーネン)の戦いという図式はここ数年の春クラッシックの基本的な図式は今年も同じ。
圧倒的な力でレースをコントロールしてきた年と比べ、今年のシーズンは明らかに二人とも「何か」が足りない。
弱くなったというよりも他のライバル、例えば彼らがその強さを認めるベルキンの若手セプ・ヴァンマルク、アタックのタイミングを見極めているBMCのグレッグ・ヴァンアヴェルマート、そして絶対エースに君臨するキャノンデールのペーテル・サガンなどなど。
昨日のレースも最後まで本当にエキサイティングで、最後に先頭グループに残ったすべての選手にチャンスのあるレース。
解説の立場としても、あくまでもカンチェラーラボーネンに軸を置きつつもウィギンスだったら・・・なんてことを考えつつエキサイティングでした。
ちなみにツールとパリ〜ルーベ制覇は、81年のベルナール・イノーまでさかのぼり、もしや24年ぶりか!!と見たかったんですが・・・
ツールとパリ〜ルーベを制したことのある選手は11人(カウントし忘れてないかな・・・)
近年はイノー(81年)メルクス(68年、70年)ヤンセン(67年)の3人で4回。1年のうちに2つとも制したのはラピーズ(1909年)とイノー(1981年)のみ。すごい!!
今現役で両方を制する可能性は、ツールに優勝経験のあるコンタドールシュレックエヴァンス、ウィギンス、そしてフルーム。
パリ〜ルーベ優勝経験のあるファンスーメレン、カンチェラーラボーネン、そして今回優勝したテルプストラで9人のみしかリーチしていない。



あとテルプストラの優勝は、オランダ人ではクナーフェン以来でカウペル、ラース、ヤンセンパリ〜ルーベ最速記録のポスト(時速45キロ超!)たちに並ぶ5人目の勝利。

クナーフェンはミュセウのアシストで飛び出して独走力を生かして逃げ切り。
そう、今回のテルプストラと同じパターン。
どちらかというとチームの指示でエースのためにライバルに足を使わせるはずが、誰も追従できずに逃げ切った、と。
ミュセウが掴みかけたぺリ〜ルーベ歴代最多勝タイ4勝目のチャンスは、チームメートが結果的に持って行っちゃった(スプリント力に長けるミュセウなら、徹底的にグループをばらけさせない動きでもよかったとも思える)
そして引退の年の2004年は、バックステッドが優勝したけれど、第3セクターだったかでまさかのミュセウがパンク。
先にトラブルで遅れたライバル、ファンペーテヘムとバックステッドハモンドらを追走するも追いつけず、感動のライバル二人ががっちりと握手、健闘を称えあってゴールするという涙腺にアタックされるようなゴールでミュセウの4勝は結局成し遂げられずだった。
パンクや落車も含めてのパリ〜ルーベ
ミュセウはゴール後ベルギーのテレビに「仕方ない」と3日後のシュヘルデプレイスを引退レースに控え淡々とチームバス入口でコメントしていたが、インタビュアーがまさかの「ヨハン、あなたが真のチャンピオンです」と私感を伝えた途端にミュセウが号泣。そしてそのままチームバスの中に入って行ってしまった。
あの時はミュセウの大ファンだったオレもマジで泣いてしまった。
プロになって集団の中で何度も憧れのミュセウを見てきたし、90年代後半からようやく声をかけてもらえるようになり、一緒に逃げたレースでは「敵」なはずなのに走り方のアドバイスまでしてもらい・・・
(99年のベルギーのナショナルレース、デッセルヘムでは7人で逃げ切りミュセウが優勝、オレが4位だった)
オレのプロ人生はいつもミュセウを見て走っていたからね。


今回ボーネンは歴代最多の4勝タイでいるものの、目指すは単独の最多勝5勝目しかない。
ライバルたちに奇襲を仕掛けるべくまさかの65kmで飛び出したものの、逃げグループではトーマス、そして後から合流したフースホフト以外全く協力を得られないという最悪のパターン。
ゴール後のインタビューでも「テルプストラの勝利はうれしい。僕は不運の一日だった」とコメント。
さすがにあそこまで「逃げる」という意思のもとで形成された先頭グループで先頭に出ないのは、意味が分からない。

「最低な日だった。ラスト30kmでボトルゲージが壊れてしまい・・・そして先頭グループでは逃げているのに先頭を引かないのか理解できない。逃げているんだから先頭に出ないと!」と、ボーネンはベルギーのインタビューでも怒りを露わに。
放送中も言ったけれど、ゴール後の更衣室はちょっと見てみたいけれど・・・一緒に逃げていてひかなかったメンバーは、絶対更衣室でボーネンの横なんて嫌だろうな。
結論わかるし見たくないか(笑)


ボーネンの年齢を考えると、彼の破壊力で優勝できるのはおおよそ3〜4年だろうか。
その間にぜひあと1つ、なんとか勝って歴史を変える瞬間は見てみたいね。

地元フランスは98年のゲドン以来15年以上優勝していません。
っていうかパリ〜ルーベの国別優勝回数を見ると、ルーベ=ベルギーでしょ!って思うほどにベルギー人で占めています(笑)


来週はアムステルゴールドレース
アルデンヌクラッシックと言われ登りも30回ほどあると言えど、勝つにはパンチ力が必要で過去にはチュミルやルードリッヒ、古くはヤン・ラースにイエレ・ネイダムなど、短い登り(1kmぐらい)は無難に出力でこなしてゴールでさらに斬ることができる選手にもチャンスがあるコース。


最後に
昨日の放送を最後までお付き合いいただき、どうもありがとうございました。