2013 SR600 FUJI


PC5峰の原高原入口の菅平高原看板から上田までの下りは、何度か車では下っているので道はだいたい記憶している。

しかしそれにしても雨で路面はウェット、ライトの光もほとんど反射せず、光を吸い取られているかのように前が見えない。
寒さで体が震え、そしてそれが原因でハンドルがしっかりと固定できない。
ブレーキングポイントも、いつもの自分の感覚では全くできていない。
今考えていることはひとつだけ。まずは下界へ早く降りたい。それだけだ。
知っているはずの道なのに、ほとんどこれから通るところを先回りで思い出せない。何度か路面に流れ出ている石などにヒットしたり、路面の段差に引っかかる。

菅平口から上州街道に入ったところで少し交通量が増える。
おかげで背後からの車のライトで路面状況が少し把握できると同時に、かなり下ったからか気温が上昇し体の震えは菅平あたりとは比べものにならない。
少しずつ自分の落ち着きを取り戻してくるが、体はビショビショ。今はとてもこのまま走り続ける気力がない。
R8バイパスにまで降りたとき路面はところどころドライになっていた。
ここで知人に電話を入れて現時点と今後の天気概況を確認。
まだ夜中にビーナスライン付近は雨の可能性がある。標高2,000mでさっきのような雨が来れば、正直命の危険もあり得るだろう。1,300mであれだけ自分の集中力や気力が破壊されていたのだから。


時間的猶予はなんとかなるはず。
今回は寝ずにノンストップで走るつもりでかなりペースダウンし、決して余りあるほどの余裕はないがタイムリミットまで見ればホテルでしっかり寝て衣類を一度洗濯して乾かしてもなんとかゴールは確実だろう。
そして関東地方は台風の影響を受け始めていて走行予定時刻は終日雨。
ギリギリの体力で走り続ける危険を選ぶよりも、一度ここで仕切りなおしてもいいのではないか。
個人的には単独ノンストップ40時間以内を狙っていたので不本意だが、「たかが」遊びで命の危険にむやみに入り込んでいく意味はない。
しかし上田市内でホテルをあたるも、意外とすべて満室。
そしてなんとかなったのは約20km強離れた小諸市内。
移動の最中にPC6の国分寺で写真撮影、小諸までは登り貴重なうえに吹きおろしの向かい風。
ホテルにチェックインをしたのは日が変わった0時30分。
そこから大急ぎで洗濯機、風呂、洗濯をし終えたら部屋を冷房で乾燥させて衣類を乾かす。
エアコンのタイマーセットしたら布団にくるまってさっさと就寝。多分2時前だった。


朝6時前に起床し用意開始して7時前にホテルを出発。
前輪の空気が少なくなっている。
パンク??
にしては走行してもわかるほどに空気は減っていかない。
途中で朝食をすき家で食べて、8時すぎにようやくルートに復帰。
下丸子でドリンクや補給食を買い込む。ここから予定では野辺山あたりまでノンストップの予定だ。
ペースを落として極力脂肪燃焼域での走行に切り替えて走るつもりだ。
国道152を離れて県道62へ。
やはり空気漏れが気になるのでチューブ交換。
タイヤのどこにも穴が開いていないのだがチューブ側面にやすりで削ったかのようなダメージがあり、そこに唾をつけてみるとほんの少しだが気泡を発見。
昨日の菅平からのダウンヒルか、はたまた渋峠ダウンヒルかでチューブにダメージを受けたのかもしれない。
タイヤにはまったく何かが刺さった後もなければ切れてもいない。何が原因なのだろうか・・・
タイムロスだがこれ以上ロスを生じさせないためにも、きっちりと空気圧を上げてから走行再開する。


武石から美ヶ原は、ミヤタ時代に何度も走ったことのあるルート。
いつもメンバーでふざけ合ってアタックしながら頂上まで走っていたっけ。
武石観光センターから頂上まで13kmほどだったか。
多分1時間半ぐらいは見ておいた方がいい。
39Tx27T、時折25Tで。
標高1,400mを境に昨日と同じく雲の中へ。
昨日と違うのは、昨日は夕方で冷え込んでいくし時間に追われる感じだったが、今日はまだ午前中で時間に関しては大丈夫だ。
しかし時間に関しては油断は禁物。
52時間として13日の朝7時。実際2時間はエマージェンシー的に考えているので、あと17時間で300km弱。
と考えるとあまり余裕はないか(-_-;)
太陽は頭上にはあるのだろうか?雲は上部が明るく白い。
時速10キロ前後をキープしていく。
見覚えのあるミヤタの保養所を過ぎたらもうすぐ頂上、急に視界が開けてきた。雲の上に出たのか。
標高1,800mは雲の上の世界、晴れているわけじゃないが晴々した感じ。
11時08分にPC7、美ヶ原到着。
ちょうどあと少しというところで、関西人には全く馴染みのない「アモーレの鐘」が11時を知らせてくれた(笑)


ここからはダウンヒル、そしてアップダウンの続くビーナスライン
意外と蒸しているので扉峠を過ぎてから展望台でソフトクリーム購入。
店の老夫婦を少し喋りこむ。
途中眼下に諏訪湖を見下ろし霧ケ峰高原、そして車山高原から白樺湖へ。
路面の荒れたダウンヒルは自転車への負担もだが体への負担も大きい。
今回はバーテープを工夫し衝撃をかなり緩和している。
長距離で意外とダメージを受けるのは手首から手のひら、首、肩だろう。
ここのダメージを緩和できれば長距離でのストレスは、かなり緩和されるに違いない。


白樺湖からは地味にきついスズラン峠、そして下り途中に設定されているPC8で写真撮影、下りきったら麦草へと向かう。
(ちょっとこの区間はわかりづらかった)
麦草峠は勾配はたいしたことはない。ただ長いだけ。平均時速がみるみる下がっていくのがストレスなだけだ。
登り始めるとすぐに雲の中へ。
標高2,000mを越えても今回は完全に雲の中。
どころか徐々に悪天候、嵐の形相に変化する。
今回はヤバいと感じた時点でレインジャケットは着用しておいた。
頂上で写真を撮影後、冷たい雨、というかまるで氷水の中を下っていく。
足先の感覚はあまりなく、コーナーで踏ん張っても踏ん張りきれていない。
そして雲の抜けた標高1,200mあたりで路面はドライになり、ようやく感覚も戻ってくる。
国道141は608青葉でも走ったルート。


50時間でゴールを想定すれば平均時速12キロ。
走行スピードを平坦で25キロほどに保てば、無駄に休憩などをたくさんしなければ十分完走ライン、下り区間の野辺山〜芦川と山中湖〜ゴールの下り区間で平均時速は確実に上がる。
下りの時間短縮分で補給を取る休憩時間を確保はできるからここから野辺山までを頑張れば、あとは少し気楽だ。
何度も走って小海から野辺山までも把握しきれている。
無理はしない範囲でペースを上げていく。

野辺山到着
ひとまず1,000m超級の峠はこれが最後。
河口湖への登りもあるにはあるが、ここからは平均時速は上がっていく方向で考えていい。
急に腹が減ってきた。
丸子で食べたっきり、そこからはシリアルバーやらでごまかして走ってきた。
ひとまずパンを食べてコーラを飲んで。本格的に何かを食べるのは韮崎へ下ってからにしよう。
PC10で写真を撮って韮崎までは長い下り。
絶対に登りたくはないよな、と毎回思う野辺山から韮崎への佐久甲州街道、国道141。
時速50キロ平均で下ることもまったく難しくないほどの勾配と長さ。
1時間かからずして35キロ以上もの距離を移動。

韮崎のコンビニで温かいものを食べておく。
天気予報では日が暮れて富士五湖あたりからゴールまでは雨、それも相当強い・・・
まともに食べたりする場所があるかもわからない。

さぁ、残す距離も120kmほどだ。


美ヶ原への登り
雲の中で視界がほとんどなく、どこをどう走っているのかもわからない。
まるで精神的に試されているかのようだ



突如目の前を何かが横切り、ガードレール横に隠れた。
一体なんだ???



ミヤタ時代、毎年この美ヶ原頂上付近になる保養所を基地に、合宿を行っていた。
みんなとバーベキューもしたなぁ〜



標高1,800mを過ぎると雲の上に



美ヶ原に到着関西人に馴染みのないアモーレの鐘が人気のない山の上で響き渡っていた



ビーナスラインを走っているとヘビが・・・
突然の低温の雨で力尽きたか。まださっきまで生きていたかのようだ



諏訪湖が見える。
頭上にはまるで当たるぐらいの高さに低気圧の雲が



麦草峠
風は強く寒い
峠のピークの向こうは更に暗雲が
下りはとてつもない雨で突風だった・・・



野辺山から見た八ヶ岳
低気圧雲に完全に覆われている
あそこを走ってきたのか・・・(-_-;)



野辺山
ここからは全体で言うと下り基調
気持ち的にはここで大きな荷物をおろした気分