2013 SR600 FUJI

masahikomifune22013-06-18



中軽井沢から長野原、そして草津を経ての渋峠〜中野へのルートは、実は今回が初めて。
今回のSR600の中で一番険しいこのルートが初体験と言うのも、とてもまともなチャレンジャーとは自分でも思えない(笑)
中盤以降の美ヶ原からのビーナスラインがナイトランで危険だと言っても、すべてここでのペース配分に起因していると言っても過言ではない。
もしここがスムーズに走れるのならば、上田へもかなり早い時間帯に到着でき、その結果ビーナスラインの走行時間も読めるはず。


正直なところ今までのほとんどのブルベでの恐怖心というのは、多少危険を感じて気を引き締めて走っているものの、それはレースを走るときと同じ程度の恐怖の大きさ。
しかし今回は漠然とだが何か上手く言い表せないが大きな恐怖に包まれている。
きっと登山での死との隣り合わせしているような、そんな感覚なのだろうか。
登山をしたことはないから的を射た例えか否かはわからないが。


単純に渋峠や美ヶ原でコースアウトし、谷底で誰も見つけてくれなかったとしたら、他のブルベ以上に危険だろう。
崖の深さも半端じゃない。
だからこそスタート時間で調整して渋峠を下りきるまでは絶対日が沈まないよう調整した。
しかしルートは把握し切れていない・・・厳しいのだろうが、どのぐらい厳しいのだろうか。
あくまでもコースプロフィールでおおよそのスピードを算出し、15〜16時が渋峠の頂上というだけのことだ。


浅間越えへの登りは高地を駆けあがる心地よい峠。
インナーローの39Tx27Tもしくは2枚目の25Tで走る。
汗をかきすぎない。これは下るときに体温を奪われる=疲れることを避けるためだ。
標高も1,000mを越えると徐々に気温が下がっていくのを感じる。
大きな右カーブでは極力左の端を走って勾配を緩く感じられるよう努力する。
自分より上空は雲で何も見えないが、下界は眼下に見え隠れする。

そして標高1,400m、頂上へ近づく。
ここから再び群馬県。いったいいくつの県を跨いだのだろう。
ここからのダウンヒルは地図で確認した際に難しいコーナーはない。
近直線的な下りだったはずだ。

下りきる直前付近で曲がりくねっていたので、谷底へ降りるようなイメージか。
膝が冷え切らないよう重すぎないギヤでペダリングを止めない。常に足を動かしながら下っていく。そして見通しのいい下り区間で補給食を口に運ぶ。

下りきって大津の交差点、ここのコンビニで温かいものを食べて補給食も多めに購入。
それは今のコンディションが崩れてしまっても「万が一」に備えた補給食だ。

さぁ、出発!と言うときに携帯に重要な仕事メール・・・
すぐに脚を止めて電話で対応。
ここでよかった、ここから先だと携帯圏外の可能性もあるし急勾配で仕事の対応はしたくない。


草津への登りは思ったよりも急勾配だ。
関東の人はみんな知っていることかもしれないが、俺は勝手に草津は軽井沢のような高原になるものだと思っていた。
もしくはここまで険しいところにあると思わなかった。
お風呂に入れる入浴剤のようなホッコリとユルいのが草津温泉のイメージだった。
まさかこんな「男らしい」登りの先にあるなんて・・・
スピードを確認すると思いのほかスピードは出ていない。
ようやく時速10キロといったところか。
このスピードでの計算だと渋峠の頂上まで3時間以上かかる計算だ。
13時半に大津のコンビニを出発したので、このままだと16時半頃に渋峠頂上。ちょっとペースが遅いか??
と言ってペースが上がるわけもなく、淡々とペダルを踏んでいく。


ポラールの表示モードを標高にセットし、どれぐらい登ったかを参考に進んでいく。
距離を見ているとあまりにも進まなさ過ぎて、それこそ自己嫌悪に陥る。
時折勾配は緩くなるが、23T〜27Tでケイデンスは遅め、とにかくまだあと400kmはあるんだと言い聞かせる。
ようやく草津温泉郷に到着。約1時間、計算通りのペース。
さてここからが本当に峠だ。と言ってももちろんここまでも十分峠なのだが・・・
さすがはSR600、積算高度10,000mは半端じゃない。自分のテンションも気を緩めると下がってしまいそうだ。
焦ってしまってペースを上げてしまいそうになるが、この先数キロで失速してしまっては意味がない。
とにかく頂上に着いたときに余力を感じるのが大事。無理をせずに進んでいく。
標高も徐々に上がりはじめ1,400mを過ぎたころ、急に視界が悪くなる。
どうやら雲の中へ入ったようだ。
ほとんど視界がない中、前から後ろからエンジンの音が響く。その都度こちらが見えているのか不安になる。
一応ライトは点灯しているが、それが相手に見えているのか否かまではわからない。

突然異臭が立ち込める。
どうやら温泉が湧いているのか。
雲とは違ったガスが立ち込めている。
目の前に注意、立ち止まるな、と・・・ほとんど立ち止まるに近いスピードの俺はどうすればいいんだ??
そんなどうでもいいことを考えつつペダルを回す。
登れど登れどガスの中で、いったい自分がどのぐらいの位置で走っているのかわからない。
標高が上がるにつれて、少しずつだがギヤを軽くしないと進まない。酸素が十分じゃないのだろ

うか。
標高2,000mを過ぎて明るくなり始めた、と思ったら長野県側斜面が見える。どうやらもうすぐ頂

上なのか。
すると群馬県側から長野県側へ、雲も掃除機で吸いこむかのようない勢いで進んでいく。
油断すると自分も吸い込まれるかのよう強風。
そして霧の中から頂上が現れる。
16時40分頂上到着。
記念写真を撮ってさっさと下山開始。
登りも長かったが下りも長い。
40分以上下ってようやくPC4の道の駅やまのうちへ。
既に夕方5時半を回り、営業時間を終えている。長居は無用、写真撮影後すぐに走り始める。

下り基調の中野の町を通過しコンビニで休憩。
ここで晩御飯、そして菅平を抜けるための補給食を購入。
菅平は標高1,300m強、渋峠を比べると何も心配することはない。
おまけに過去にイベントで峰の裸高原には何度も宿泊しており、麓の須坂からも走っているからここからは知っている地域だ。

登りに差し掛かるころ、知人から電話があり喋る。
天気予報を聞くと雨が降るかも、とのこと。
まぁしばらくは大丈夫だろう。頭上には雨雲もないし降るとしたら菅平を抜けてからか・・・

真っ暗闇の菅平、イージーペースで登り始めるが思いのほか湿度が高く汗が吹き出る。
ペースを上げているわけではないのだが・・・
つづら折れが始まる直前の片側交互通行、信号のインターバルがとても自転車じゃクリアーできるものではなく、前からの車に怯えながらの走行。
そしてつづら折れ区間へ。
標高も徐々に高くなり、あと200mぐらいの標高を登れば頂上と言うところでポツポツと雨。
と思った途端、背後に何か獣の集団が通り抜けていく。
これにはさすがに背筋に悪寒が走った。もしあの集団が俺のバイクに突っ込んできていたら・・・
そう思って走っていると急に気温が下がり、雨が本格化。
しまった、どこかでレインジャケットを羽織っておけばよかった・・
全身があっという間にびしょ濡れ。そして頂上に着くころには大雨で風もきつくなってきた。
写真を撮るにも体が震えてきて歯がガタガタなるほどに寒く、何か集中できない。
もし写真撮影の義務がなければこのまま一気に下ってしまいたいが・・・
まさかこんなに寒くなるとは
指がかじかんでレインジャケットのジッパーを上げることすら困難。そうしているうちにも時間はどんどん過ぎていき、体がますます動かない。
動かないといけない気持ちはあるが、動けない・・・
でも早く動かないと本当に危険だ。
そう思いながら気合いを入れてバイクに跨り雨でライトの光も消されてまっている闇の中へ進んでいく。




浅間越えを越えて長野県から群馬県嬬恋村
バス停の名前はみたまんま「県境」(笑)
自分撮りの技も進むにつれて磨きがかかる



いよいよ渋峠
標高1,400m、雲の中へ・・・


限りなく停止と変わらないぐらいのスピードで頂上を目指す



標高2,000m、ここを境に気温が下がり冷たい突風が吹き付ける



渋峠
気温が低く風もきつい
記念撮影が終わったらさっさと下山しないと命の危険すら感じる




さすがは雲の中、顔やサングラスは水滴でビショビショ



もちろん自転車のあちこちもビショビショ



渋峠の中野側は思っていたよりも普通で助かった
路面もほとんどドライ、約40分間のダウンヒルを終えて次のPCである道の駅やまのうちに到着



突然の嵐の中、菅平へ
気温も低く大雨、闇と恐怖が俺を包んで、さすがに泣きが入る・・・
まさか一番安全だと思っていた菅平で、自然の怖さを思い知ることになった
今回防水カメラをチョイスして助かった、と感じた瞬間だった