パリ〜ブレスト〜パリ その1

8月21日 朝 
もしPBPでタイムを狙うなら、最も大事なのはスタート位置だろう
80時間のカテゴリーだけでも500人以上は参加しているはずで、200〜300人ごとに1グループに分けられてしまう。
いったい何時間前に並び始めるのか想像もつかない。
スタート2時間前だと結構いるという話は聞いたので、4時間前の正午に会場へ行くことにする。
今回スタッフに徹してくれたオダックス近畿の森脇君、そして近畿600で23時間半という異次元の走りを見せた落合くんの3人で会場入りでする。
するとまだ誰もスタートに並んでいない。
ここぞ!とばかりに近くのレストランで食事へ行く。
ホテルを出発するときに食事はしてきたが、今度はいつ温かいものを食べられるのかはわからない。
ピザとコーラ、全部を食べるにはお腹がパンパンなので、とりあえず半分だけ食べる。


8月21日 午後1時、3時間前
スタート付近には既に10人ほどが並んでいる。
どうするか悩んだが、確実に前に陣取るために並び始める。
そしてグラウンドのゲートに移動すると、どこから入ってきたのか既にかなりの人がいてビックリ!
そしてゲートはグラウンドの裏だと聞いて移動したらやっぱり横だとか、とにかく情報が錯乱状態でみんな荷物を持って右往左往・・・
森脇君のおかげでそれでもかなり手際よく対応でき、2時半のゲートオープン時、最初の20番ぐらいでグラウンドに入ることができた。
グラウンドでもみんな自転車に乗って入ったりランニングで移動したりと、ここでも少しでも前に位置しようと必死だ。
そしてグラウンドで再度機材チェックとブルベカードへスタンプとスタート時間が刻まれる。
それが午後3時15分、まだあと45分近くある・・・
ここは日陰のないグラウンド、この待ち時間がつらい。
ビニール袋に入れて持ってきた水と補給食を食べながらスタンプ時間を待つ。
一緒に待つ落合くんは既に顔がぽぉーっと赤くなっている。軽い熱中症か?
俺もなんとなく熱いので彼と同じような顔になっているのか・・・
もしかすると走り出す前の、この4時間が一番きついと感じるかもしれないな、と一人で冗談を考えてにやけてしまう。
まぁそんなことを一人で考えてにやけているうちは、まだマシなのだろう・・・


午後3時15分 スタート45分前
突然ブルベカードのコントロールオープン。相当テンションが上がって前に進んでいく。
ライトやベストなどのチェックを終えてカードにスタンプ
この1個目のスタンプ箇所「サンカンタン・アン・イブリンヌ」の欄を埋めた。
そしてスタートの道路へ移動
ここでもダッシュだ。

よしっ!
と思うものの、再び待ち時間・・・(泣
今度はスタートラインの100m手前で待たされ、ようやくスタートラインへ着いたときは午後3時45分
しかし警察の方からコース上の安全が確保されていないということで10分延長。
もう暑さでグデングデンだ・・・
一応2列目を確保
これはちょうどバルーンの真下で日陰ができている。


午後4時10分 スタート
やっとスタートできる
先導バイクに連れられ、集団は一斉に進んでいく
集団はとても1200km以上先のゴールを目指しているとは思えないほどにナーバス。これは完全にロードレースだ。
コーナーでもやたらとスペースを空けず、まずはあまり得体のしれない連中を自分の前に上げないようにする。
案の定あちこちで落車や接触が起こっている。
一体なんでこんなにナーバスなんだ!そう思っているうちに郊外に抜けて、小さな登りを何度も繰り返しては小さな町に入り込む。
すると道は狭く、中央分離帯があったりで落車したりする選手が相変わらずいるので危険極まりない。
今こんなところでトラブルに巻き込まれたくない。その思いでとにかく前の30番あたりをキープする。


集団は一列になるほどのペースではない。多分40キロ前後だろうか。
平均して向かい風の中を進んでいるため、先頭にしてみれば上げるメリットがない。
ペースをあげなくてもここで蓋をしてしまえばいい。このあたりもまるでロードレース
よく言えば自転車大国フランスらしさがでている。
レースじゃないのにみんな心得ている


振り返ると集団は切れることなくどこまでも長い
化け物のような集団だ
100kmほど進んでようやく集団は150人弱に落ち着いたようだ。
このぐらいになるとさすがにナーバスさが抜けて走りやすくなる。
この時点でボトルが1本半消費(3本所持)補給食もフランスパンやシリアルバー、黒糖飴も半分近くなくなる。
待ち時間と暑さで結構な量を消費している。
確か140kmほどの地点で補給ポイントがあると言っていたな。
みんなどうするんだろ。多分止まるのかな・・・
どう見てもみんなボトルもほとんど空だしPC1(220?)まで行けると思えない。
先行グループと別にロードレースの集団のように小便ストップグループができてあとから追いかけるのだろうか・・・


この後補給のみ(通過チェックポイントではない)のモルターニュ・オー・ペルシュの町(140km)が近づいてきた。
集団の中の選手たちは急に携帯で連絡を取り始める。
そして集団のペースはなぜかどんどんとペースアップしてくる。
ん?なぜ??何が起こっているんだ???

そして町に入るとかなりの急勾配
ここで集団はいきなりスピードを増し、10%以上あるような勾配で加速。
一列になり突き進んでいく。中にはアウターで登っていく選手もいる。
俺はインナーを42Tにしているので、ひとまずインナーで16T、17Tで走る。
この町の入り口から補給がOKなのか、サポーターが待つポイントでボトルや補食をゲットしている。
登りの途中で物干しざおの先に目印をつけて振っている人までいる。
補給地点をわかりやすくするためだ。

俺はペースアップや補給で中切れしていく集団を後ろからパス。
とにかく先頭にくらいついて行こう。俺は前のグループに合流
そして頂上で
彼らのサポーターは頂上に陣取り、皆急ブレーキでストップしサポーター2人がボトルを差し込み、ポケットに補給食を差し込む。
俺に補給地点でのサポーターはいないし、体育館かに用意された食べ物や飲み物を取りに行く時間はない。
突然頭の中が真っ暗になる
俺はサポーターもなく、とんでもないところに来てしまった・・・
一体手ぶらで俺はこいつらとどうやって戦うのか???

下りに入り街角を抜ける直角カーブ、途方に暮れて腕に力が入らないまま俺はコーナーをクリアーしてしまっていた・・・


スタート4時間前、近くのレストランで食事しようと行ってみると既に日本の先客が
一緒に食事させてもらい、健闘をたたえあう



まだ2時間前落合君とゲート近くで休憩
日陰はまだましだが、それでも日本のように暑い日だった



グラウンドに移動してからの落合君
軽い熱中症かボォーっとしていた・・・



とうとうとった1組目スタート
これだけでも日本史上初か
油断するとこれだけで満足しそうだった(笑)



スピードメーターの距離は0km
これから1230km先まで進んでいくことになる・・・



後ろを振り向けば・・・
凄い選手の数!!



スタートして3kmほど
集団の先頭はバイクに先導されて走りやすいが、この後ろの方はなるべく早くいい位置へ上がろうとまるでロードレースのような位置取りだった